【ぎょうむれんらく】かんとんしょうのびょうきについて

■エボラ出血熱 Ebola hemorrhagic
fever

 

病原体:エボラウイルスEbola virus
好発年齢:特になし
性 差:なし
分 布:アフリカ中央部(スーダン、コンゴ民主共和国、ガボン)および西アフリカ(象牙海岸)

エボラ出血熱の背景
■疫学状況
●アフリカ中央部の熱帯雨林帯:今まで発生のあった国はスーダン南部、コンゴ民主共和国(旧ザイール)中央部、北部、
ガボン、象牙海岸およびガボンから感染者が移動して発症した南アフリカである。
●1976 年スーダン(死亡率53 %)、1976 年ザイール(88 %)、1979 年スーダン(65 %)、
1995 年ザイール(77 %)、1996 年ガボン(66 %)、1997 年ガボン(75 %)など、
アフリカ地域以外での発生はない。発生ごとに周辺地域住民の抗体保有調査がなされており、数%(不顕性)
が保有している。なお動物、昆虫などの自然界の宿主、媒介動物については全く不明。

■病原体・毒素
●フィロウイルス科に属する1 本鎖RNAをもつエボラウイルス。エンベロープを有し、多型性(U 、Y 、
ぜんまい状など)を示す。長径800 ~1、500 nm 、短径80 ~100 nm 。

■感染経路
●自然界からヒトへの経路は全く不明。チンパンジーとの関連は2 回(1994 年象牙海岸、1996 年ガボン)
であるが、チンパンジーはヒトと同様終末宿主であり、ウイルスキャリアではない。ヒトからヒトへの感染は、
(1)医療機関での汚染注射針の頻回使用、(2)医療や看護、家庭や病室での家族などの介護の場での基本的器具(手袋、
マスク、ガウン、長靴、ゴーグルなど)が不足していることによる。
●空気感染はないとされている。感染源となるのは血液、分泌物、排泄物(尿、吐血、下血など)。唾液などの飛沫。

■潜伏期
●2 ~21 日。

診断と治療
■臨床症状
●発症は突発的である。症状の進行の仕方は重症インフルエンザ様で、高熱とともに、眼結膜炎、咽頭痛、
筋肉痛および頭痛があり、次いで胸・腹部痛および出血(吐血、下血)を示す。死亡者の90 %以上は消化管出血を示す。

■検査所見
●過去患者発生がみられた病院で十分な系統的検査は行われてはおらず、肝機能障害はみられるが、特徴的な所見はない。

■診断・鑑別診断
●確定診断
●発症早期の血液(~10 日くらい)や咽頭スワブを培養細胞(Vero E6 )に接種しウイルス分離を行う。
あるいは同材料でウイルス遺伝子の検出(PCR など)を行う。抗体検出はELISA 、免疫蛍光法などで可能。

●鑑別診断
●他のウイルス性出血熱および出血を起こすウイルス病全般。

■治療
●特異的治療法はなく、対症療法が中心。

■経過・予後・治療効果判定
●致死率は患者の53 ~88 %と高い。医療関係者の感染率も高い。解熱後血液の感染性はないとされる。
治療例では予後は悪くない。

■合併症・続発症とその対応
●ウイルスは持続感染しないので、それによる続発症はない。

■2次感染予防・感染の管理
●予防ワクチンはない。
●病室での感染者、患者の血液、体液、排泄物の取り扱いには必ず手袋、マスク、ゴーグル、ガウン、長靴などを使用し、
接触感染を防ぐ。素手で取り扱ってはならない。患者の使用物、接触物はすべて病室から出す前にオートクレーブ、
薬液消毒などの処理を行う。注射器は絶対に再使用してはならない。

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